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実はそれ、ものすごく失礼! LGBT当事者さんに嫌がられる恋愛事情の訊き方とは?

chikaze

92’/ノンバイナリーのフリーライター/修士(学術)/社会心理学専攻、主にジェンダー論。純文学、’70s少女漫画、映画、古着が好き。街コンで出会った夫ともうすぐ結婚2周年。noteでエッセイと小説を書いています。

昨今、やっと社会的に認知されるようになってきたLGBT当事者たち。恋愛対象が異性じゃなかったり、男女両方の人を好きになったり、体と心の性別が違っていたり、セクシュアリティは人の数だけあります。

そうしてくると問題になりやすいのが「普段交わす会話でLGBT当事者の人に嫌な思いをさせていないか」というもの。

特に恋バナなんかは、実は結構デリケート。知らずに誰かを傷つけている可能性はなきにしもあらずですよ。

そこで今回は、ノンバイナリー(心の性別が男女どちらでもない人間)でありバイセクシュアル(男性・女性どちらにも恋をする人間)であるぼくが、LGBT当事者としてこういう恋愛事情の訊き方はちょっとな…と思ったものをピックアップしていこうと思います。

LGBTってなんだろう?まずは基本からおさらいしてみよう!

まずはLGBTについて、改めておさらいをしておきましょう。「聞いたことはあるけれど具体的にはよくわからない」とモヤモヤしている方でも、こちらを読めばそれが解消されるはず!

LGBT当事者は花粉症やAB型の人と同じ割合で存在する!

「珍しい人」のように感じられることの多い、LGBT当事者たち。でも実はその人口の割合は、花粉症やAB型の人と同じだけ存在すると言われています。

ちなみにぼくは、LGBT当事者であり花粉症であり、AB型でもあります。

そう考えると、特に珍しい人ではないですよね。学生時代のクラスにだって、絶対数名はいたはずです。

「自分の周囲にはいない!」と言う人もよくお見かけしますが、それは当事者がカミングアウトをしていないというだけかもしれませんよ。

性自認ってなに?

性自認とは、「自分の性別をどう認識しているかを示す概念」です。

あなたの戸籍上の性別が女性で、身体も女性で、自分のことを女性だと思っているのなら、あなたは身体と心の性別が一致した「シスジェンダー女性」になります。

性的指向ってなに?

これに対して性的指向は、「恋をする相手の対象を示す概念」を意味します。あなたがシスジェンダー女性で男性に恋をするのなら、あなたは異性愛者(ヘテロセクシュアル)ということになります。

したがって性的指向と性自認は、まったくの別物なのです。よく混同されやすいのですが、この2つの概念は互いに干渉することはありません。

だって、シス女性でありながら女性に惹かれる人(レズビアン)だっていますよね?ごちゃごちゃになりやすいけど、性自認によって性的指向が影響を受けたりすることは、実はないんです。

性表現ってなに?

性自認や性的指向という言葉は聞いたことがあっても、性表現という言葉は耳慣れないという方はきっと少なくないのではないでしょうか。

性表現は「見た目や言動で他者に示したい性別を示す概念」です。

たとえばマツコ・デラックスさんなんかは「女装家」と名乗っていて、女性のような服装を好み女性のような話し方をするけれど、心は男性だとおっしゃられていますよね。

つまりマツコさんは、性自認が男性で性的指向が男性、性表現は女性ということになります。

ついつい訊きたくなっちゃう?LGBT当事者さんに抱きがちな疑問とは

心と体の性別が一致していて、なおかつ異性愛者の方(シスヘテロ)にとっては、LGBT当事者は特殊に見えてしまうのかもしれません。

それゆえに「自分たちとは全然違う恋愛の仕方をしているのでは?」と興味を抱いてしまうのかも。

そこでまずは、シスヘテロのみなさんがLGBT当事者さんに抱きがちな疑問を見ていきましょう。

恋愛対象は男性?女性?

たとえば「身体は女性だけど心は男性」のトランスジェンダーの人、と訊くと、「この人の恋愛対象は女性なんだろうな」と決めつけてしまってはいませんか?実はそれって大きな誤解なんです。

自分のことを男性だと認識していても、恋愛対象が女性だとは限りません。身体女性で心が男性の人でも、男性を好きになる方だっているのです。

自分のことはどう認識しているの?

LGBT当事者だと言われると、「自分のことは男性/女性どちらだと思っているの?」という疑問もきっと浮かびますよね。

ですがぼくのように「どちらにも当てはまらない」タイプの人もいます。最近も、歌手である宇多田ヒカルさんがノンバイナリーをカミングアウトされました。

ただ、一口に「ノンバイナリー」といっても「男性・女性のだいたい真ん中くらい」の人や「男性・女性両方だと感じる」人、「自分には性別がないと思う」人、はたまた「そのときによって違う」人、など、さまざまなのです。

だからこの質問を投げかけられたときに、すぐにわかりやすい言葉が出てこなくて悩んでしまうことも。

ボーイッシュな女性は、女性を好きなの?

よくボーイッシュなファッションを好む女性に対して「レズビアンなのでは?」と思う人がいらっしゃいますが、それも誤り。ただ単にボーイッシュな装いを好きなだけの人ももちろんいるので、一概にはいえません。

どんな服装を好むか、ということと、どんな人を好きになるか、はまた別の話です。思い込みによって決めつけないよう、注意していきたいですよね。

実はこの危険性って、LGBT当事者間でも起こらないとは限らないのです。

これを読んでくださっているあなたがLGBT当事者であっても、油断しちゃダメですよ。同じセクシュアルマイノリティだからといって、他のカテゴリの人に不用意なことを言ってしまわない可能性はないとは言い切れないのですから。

“オネエ”はみんな心は女性で、男性が好きなの?

よくTVで見かける“オネエ”タレントですが、この方たちが全員「心が女性で男性が好き」とは限りません。

繰り返しになりますが、心も体も男性で、性表現が女性のマツコさんみたいな人もいます。また反対に、「心が女性で男性が好き」な方や、「心も体も男性で性表現が女性」の方の中には、“オネエ”という呼ばれ方を嫌う人もいるのです。

ここまでくると混乱して何が何だかわからない!となってしまう方も多いかもしれませんが、大丈夫。そもそもセクシュアリティのカテゴリの名称なんて、暗記する必要はありません。

要は「人間の数だけセクシュアリティはあるんだなあ」くらいに思っておけば、それで問題ナシ。そういう心構えでいれば、いろんなセクシュアリティの名称が出てきても「へえ」くらいで済んじゃいますしね。

絶対にダメ!LGBT当事者さんに対して失礼な質問とは?

LGBTの基本事項のおさらいと、LGBT当事者へのよくある疑問について確認したところで、いよいよ本題に入りましょう。

知らず知らずのうちにやってしまいがちなLGBT当事者への失礼な質問を、こちらで一挙大公開!なぜダメなのか理由も添えて、詳しく解説していきたいと思います。

「俺/私のことを好きにならないでよ!笑」

はいこれ。もう最悪な質問(というか言動)第1位です。ぼく自身も、そしてぼくの周囲の同性愛者ないしバイセクシュアルみんな一度は訊かれたことのある、この質問。

ちょっと考えてもみてください。あなたが異性愛者だとして、そうだからといってすべての異性と付き合いたいと思うんですか? すべての異性と喜んでセックスしたいと思いますか?思わないですよね。

嫌いな異性だっているし、友達として大切に思う異性だってきっといるはず。

それは異性愛者以外の人間も同じことです。ぼくは女性にも恋をしますが、当たり前だけど友達として大好きな女性も、大っ嫌いな女性もいます。

同性を好きになる=節操なし、みたいに聞こえるこの1ミリもおもしろくない冗談、絶対にやめておきましょう。この質問をしてきた人たちは、もれなく全員心のブラックリストに放り込んでおります。

「バイセクシュアルって、彼女も彼氏もいるの?」

バイセクシュアルの方あるあるな質問なんだけど、そんなわけないじゃないですか。

1対1でのパートナー関係を望む人間であれば、恋人は基本的に1人です。男女両方とも好きになるからといって、男性・女性それぞれの恋人がいるわけじゃないんですよ。

まあもちろんだらしない人間だってこの世にはいるので、2人同時進行で付き合っちゃう方もいるかもしれませんが、それはその人が単純にそういうだらしのない人間であるってだけの話。バイセクシュアル関係なく、個人の性質の問題です。

※ちなみに複数の人と関係者全員の合意の上で親密なパートナー関係を望む、ポリアモリーという恋愛スタイルの方もいます。そういう方たちもまた恋愛スタイルがそうというだけで、誰とでも付き合いたいと望んでいるわけじゃありません。単純にスタイルがそうである、というだけ。

「同性同士のセックスってどうやんの?」

ぼくがもっともイラッときたデリカシーのない質問は、こちら。

あるとき親しい(とその時まで思っていた)方に「実は今付き合っている人、女の子なんだよね」とバイセクシュアルであることをカミングアウトした途端、この質問をぶつけられ、すぐさま心のシャッターを下ろしました。

そのシャッターは開かずの扉となり、以降その方と2人きりで出かけることはありません。

あのですね、カミングアウト直後にする質問がそれって、いくらなんでもちょっとやばいですよ。

だって「彼氏ができたんだ」って報告だったら、絶対にいちばん最初にセックスのやり方なんて訊かないでしょ。「おめでとう!」「どこで出会ったの?」とかが第一声に来るはずです。

そういう話は一通り惚気話を聞いてから、2軒目に移動して下ネタトークになったタイミングで訊いてください。

報告直後に性的な、デリケートでセンシティヴな話題を突然降られたら嫌な気分になるのは、セクシュアリティ問わず誰だっておんなじですよ。

「彼氏/彼女いる?」

この世には、恋愛感情を持たない人だっています。それに恋愛をする人でも、恋人を作らないと決めている人もいますよね。

LGBT関係なく、他人の恋人の有無を気軽に訊ねるのもはやタブーといえましょう。

恋バナって、アイスブレイクになる気軽な話題じゃないんですよ。一昔前までそれが許されていたのは、「嫌だ」と思っている人たちが声をあげることができない状況にあっただけというだけの話。

ここ最近窮屈になったと嘆く人がいますが、窮屈な思いをさせられていた人がやっと楽に呼吸ができるようになっただけなんです。

不快に思う人が1人でもいるのなら、その可能性があるのなら、こういう話題は避けるのが吉でしょう。

できる限り他人に配慮できるのが、真の大人だと思いませんか?

「なんだかんだ男/女がいいってなるって!」

同性愛者・バイセクシュアル・またはパンセクシュアル(好きになる相手の性別を問わない人)に対して、口が裂けてもこの質問をしてはなりません。

これを読んでいるあなたがもし異性愛者なら、多数派が同性愛者の社会を想像してみてください。

それがスタンダードであるとされる世の中だから明日から同性に恋をしましょうね、なんて言われて、恋愛対象を急に変えることができますか?無理ですよね?

そのくらいこの発言は、むちゃくちゃなのです。

「同性しか好きになれないならわかるけれど、どちらも好きになれるんならいいじゃないか」と発言する人もたまに見かけますが、あのですね、真剣に1人の人を愛しているのに「男性だから/女性だからこっちにしよ!」なんてできるはずないんですよ。

他人の感情を軽んじる発言だと、心に刻んでおいてください。

神経質になりすぎないで!人としての思いやりを持っていれば大丈夫だから

いかがでしたでしょうか。

よく「何が地雷かわからない!」「タブーが多すぎて怖い」と頭を抱えてしまう人を見かけますが、そんなに神経質になることはありません。

要は相手の気持ちを慮って、思いやりを常に忘れずにいなければ大丈夫。

こちらで紹介した「失礼な質問」は、なにもLGBT当事者に対してのみ気をつけなければならないことではないですよね。誰かが嫌な気持ちになる可能性がある質問を、しなければいいだけの話です。

もし仮にあなたが無意識に誰かを傷つけてしまったとして、それを注意されたのなら、素直に受け止めればいいのです。

ぼくだって当事者だけど、他のセクシュアリティの方に対して失礼な発言をした経験が皆無かと問われれば、答えはNOですもの。

誰かに配慮したい、優しくありたい、そう願っているあなたであれば、深く悩みすぎることはありません。

ここまで読んでくれたあなたに、ぼくは感謝しています。ありがとうございます!

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92’/ノンバイナリーのフリーライター/修士(学術)/社会心理学専攻、主にジェンダー論。純文学、’70s少女漫画、映画、古着が好き。街コンで出会った夫ともうすぐ結婚2周年。noteでエッセイと小説を書いています。

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